こんにちは。ゴーストです。
昨日、友達のウオズ君と誕生日の話をしました。なぜそんな話になったかというと、彼が世話をしている水鳥の卵から雛が孵った瞬間を二人で見ていたからです。成長した姿しか見たことがなかった僕は、雛鳥のあまりの小ささとクシャクシャの姿にとても驚きました。
湖の暴れ魚
ウオズ君は自分の誕生日を知らないそうです。魚の世界にはそんなものを祝う慣習はないと言っていました。
自分の出自を怨んでいる彼は、話が進むにつれてだんだん怒り始め、水面をバンバン叩きながら湖を泳ぎ回り、雲の後ろに隠れた太陽に向かって何事かを喚き散らし、最後にひとつ見事なジャンプを決めると水底に沈んでいきました。それきり浮上してこなかったので、きっと自宅に戻ったんだと思います。
僕は呆気に取られていましたが、水鳥たちは慣れているようでした。暴れまわるウオズ君を器用にスイスイとよけて、いつも通りに過ごしていました。
ゴースト界お誕生日事件
僕たちゴーストには通常、年に二回誕生日が訪れます。ひとつは生前の誕生日です。もうひとつはゴーストになった日、つまり人間にとっての命日です。
どちらの誕生日も祝うゴーストがいる一方で、どちらかの誕生日をひどく嫌っているゴーストもいます(両方嫌っているというのは今のところ聞いたことがありません)。このことが原因で過去に何やら事件があったようで、それは多くのゴーストを悲しませたそうです。僕はその当時ここにはいなかったので、詳しいことは知りません。
悲しいことが二度と起こらないように、ゴーストたちの会議が開かれました。生前の色んな職業の色んな知恵が持ち寄られ、審議されました。会議はひと月半続きました。それからさらに一年かけて、具体的な手順と必要な道具が研究されました。その結果生まれたのが、任意の誕生日を凍らせる儀式です。
コールドバースデー
これは、生きたものが肉体を凍らせて、遠い未来で目覚めるように保存しておく方法から着想を得たそうです。凍ってしまった誕生日は持ち主を訪れることができません。冷たく暗い冷凍庫の中で、解凍のために取り出される日を待つしかないのです。恨めしかった一日は、ただのなんでもない一日として過ぎていきます。幸福な一日になるかもしれません。
お誕生日おめでとう
結果的に言えば、誕生日そのものを消し去る方法を見つけることはできませんでした。最初から知らないか、忘れてしまえばなかったことにできるかもしれません。けれども、忘れたいことを忘れるというのはなかなかに難しいものです。覚えていたいことを覚えていられないのと同じように。
消し去ることができないのなら根本的な解決にはなりません。でも人生のあらゆることを思い浮かべてみると、根本的に解決できることというのはそう多くはなかったように思います。
この記事を読んでいる方の中にも、もしかしたら誕生日を凍らせたいと思う方がいるかもしれないので、ここに凍らせ方を書いておきます。儀式というとなんだか大仰な感じがしますがそう難しいことではありません。
誕生日の凍らせ方
- 誕生日ケーキを用意する
- 味は好みのもので
- 買ってきたものでも作ったものでもよい
- 蝋燭を数本立てて普通のマッチで火を灯す
- バースデーソングを歌う
- ひんやりマッチで蝋燭の火の熱をひとつずつ奪い、冷たい炎に変える
- このマッチは霊界であれば、あらゆるところで売っています
- すべての火の色が変わったのを確認して、吹き消す
- ケーキを食べる
ひとつだけアドバイスをするとすれば、バースデーソングはなるべく心を込めて歌った方がいいですよ。楽しくなると思うので!